脱原発!グリーン・ニューディール(れいわGND)

脱原発!グリーン・ニューディールで
「共存のための強靱な経済」を目指す

■ 宣言文

私たち、れいわ新選組が目指すのは、
あなたを守る強い経済である。
どんな危機に見舞われても、
あなたが明日の生活を心配する必要なく、
生きているだけで価値があると認められる社会を
そして自身の幸福を追求し、人生を謳歌できる社会を、
地球環境の危機を克服する、大胆な経済政策によって実現させる。

目次
■脱原発!グリーン・ニューディール(れいわGND)[概要]
■脱原発!グリーン・ニューディールで「共存のための強靱な経済」を目指す[本文]

1.脱原発・廃炉ニューディールで全国に安心を!地域に未来を!被害者に賠償を!
(1)原発は即時禁止!政府が買い上げて廃炉を進めてゆく。
(2)原発立地地域の「公正な移行」のための「廃炉ニューディール」を!
(3)福島第一原発事故の被害者をだれも取り残さない。

2.脱原発と脱炭素を両立させ、日本を自然エネルギー大国に!
(1)2050年までに「自然エネルギー100%」のカーボン・ニュートラルを実現する
(2)エネルギー変革のために、10年間で官民あわせて200兆円のグリーン投資を行う
  ~全ての人々に雇用を、すべての地域に富を、新たな技術に資金を!~
(3)バッズ課税を、すべての人々の命と暮らしを支える再分配に活用する

3.防災と気候変動対策は地域への投資で!
~毎年10兆円の財源補助で、命を守る自治体を再建する~
(1)既存の「気候変動適応法」を機能させるべく、自治体に政策資源を提供する
(2)災害対策、気候変動対策は自治体が主役!プロフェッショナルを育て、雇用を促進する
(3)ひとびとをケアし、暮らしの質を高めるインフラや設備を増強する

4.圧倒的な国費投入で、数十万人規模の良質な「低炭素・グリーン雇用」を国内で大量に生み出す
(1)3兆円を投じて介護従事者の賃金を10万円アップし、55万人分の人手不足を解消するとともに、介護保険料は減額する。
(2)保育従事者の人数を約60万人まで増やすために、毎年7200億円を投じて給与を月額10万円アップし、公務員なみの待遇を保障する。全ての子どもたちに無償で良質な保育を提供する。
(3)医療制度をハード面、ソフト面ともに充実させ、医療従事者の処遇を大幅に改善する
(4)教育に大胆な投資を行う!~教育従事者の大幅増員と授業料無償化で、子どもに向き合う教育を~
(5)気候変動への適応のカギをにぎる農林水産業を守り抜く

■脱原発!グリーン・ニューディール(れいわGND)[概要]
~「共存のための強靱な経済」を目指す~

私たちは、あなたの命を守り、そしてあなたの命を受け継ぐ命を守るために闘う。消費税の引き上げや緊縮策を求めて来た勢力と、原発や石炭火力に固執する勢力は、同じたぐいの政官財の支配者集団である。政治を彼らから、私たちの手に取り戻そう。
地震国日本から、今すぐ原発をなくそう。同時に気候危機にも対処し、自然エネルギー100%の社会を目指そう。
日本が持つ財政の力を活用し、デフレ脱却を実現させ、産業空洞化を防ごう。
日本の廃炉技術と自然エネルギー技術を世界最先端にしよう。
光熱費の安い快適な住まいと防災インフラで、すべての人々の命を守ろう。
医療・介護・保育を充実させ、そこで働く人々の暮らしも向上させよう。
こうして、誰も取り残されることのない「共存のための強靱な経済」つくろう。

1.脱原発・廃炉ニューディールで全国に安心を!地域に未来を!被害者に賠償を!

(1)原発は即時禁止!政府が買い上げて廃炉を進めてゆく。

原子力発電所や関連施設は即時に使用を禁止するとともに、すべて政府の責任で、財政資金を用いて事業者から買い上げます。廃炉を行う国営の組織をつくり、その上で十分な国費を投じ、最先端の技術を用いて慎重に廃炉(廃止措置、解体)を進めます。

(2)原発立地地域の「公正な移行」のための「廃炉ニューディール」を!

「公正な移行(Just Transition)」の原則に沿った経済転換を行います。当面はこれまでの電源三法交付金と同様の財政的支援を継続するほか、「脱原発!グリーン・ニューディール」の目的にそった形での産業構造の転換、および雇用の転換を後押しします。

(3)福島第一原発事故の被害者をだれも取り残さない。

原発廃止後は原子力損害賠償・廃炉等支援機構を改組し、より透明性を高め、被害者を誰も取り残さない形で、東電と国の責任で賠償を行う仕組みを構築します。

2.脱原発と脱炭素を両立させ、日本を自然エネルギー大国に!

(1)2050年までに「自然エネルギー100%」のカーボン・ニュートラルを実現する

原発を即時禁止した上で、2050年までに自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%、温室効果ガス排出ゼロを目指します。エネルギー利用効率の向上を徹底し、エネルギー消費量の6割削減を目指します。2030年までの目標として、石炭火力は全廃し、発電量に占める自然エネルギーの比率を50%まで高めることを目指します。

(2)エネルギー変革のために、10年間で官民あわせて200兆円のグリーン投資を行う~全ての人々に雇用を、すべての地域に富を、新たな技術に資金を!~

自然エネルギーや省エネルギーのほか、エネルギー供給インフラや脱炭素化のための新技術などに、10年間で少なくとも200兆円(国費5兆円、民間資金15兆円)の投資を行い、毎年250万人規模の雇用を創出します。他方、これまで原子力産業や化石燃料産業を担ってきた有能な技術者たちや労働者たちにも未来のために活躍していただきます。

(3)バッズ課税を、すべての人々の命と暮らしを支える再分配に活用する

炭素税などの「カーボン・プライシング」の重要性は認めつつ、これが経済的に不利な状況に置かれた人々に負担を押しつけることのないよう、現金給付を優先したうえで炭素税の課税を行う「炭素配当」とします。交通が不便な地域や寒冷地に住む人々にも配慮します。

3.防災と気候変動対策は地域への投資で!~毎年10兆円の財源補助で、命を守る自治体を再建する~

(1)既存の「気候変動適応法」を機能させるべく、自治体に政策資源を提供する

2018 年に制定された「気候変動適応法」を機能させ、洪水や渇水、土砂災害等の被害を最小限にするために、省庁横断的に、全ての自治体に対して、最先端のあらゆる政策的・技術的資源を提供します。

(2)災害対策、気候変動対策は自治体が主役!プロフェッショナルを育て、雇用を促進する

それぞれの地域で、大地震や気候災害など、各種の災害に対処するプロフェッショナルを数多く育成し、公務員として雇用します。防災計画のための予算を復活します。防災のための公共事業においては、地元の人々を主に雇用し、地元の事業者が主に工事の重要な部分を担うよう態勢を整備します。

(3)ひとびとをケアし、暮らしの質を高めるインフラや設備を増強する

公費を投じてインフラの新規建設を進めるとともに、既存の公共施設は改修工事を行います。エネルギー効率と快適性を重視します。次世代のクリーン・モビリティを実現するために、鉄道・路面電車・バス網など、各地の交通システムも充実させます。電気自動車の充電設備や、自転車や歩行者が利用しやすい道路を整備します。

4.圧倒的な国費投入で、数十万人規模の良質な「低炭素・グリーン雇用」を国内で大量に生み出す

(1)3兆円を投じて介護従事者の賃金を10万円アップし、55万人分の人手不足を解消するとともに、介護保険料は減額する。看護師の処遇も改善する

2025 年度に必要とされる約245万人の介護人材を確保するために、処遇を公務員なみに大幅に改善してゆきます。毎年約3兆円の国費を投じて賃金補助を行い、介護従事者の賃金は月額10万円アップするとともに、最先端のロボットや介護用具を導入して業務負担を軽減させます。介護保険料の引き下げのための対策をとります。

(2)保育従事者の人数を約60万人まで増やすために、毎年7200億円を投じて給与を月額10万円アップし、公務員なみの待遇を保障する。全ての子どもたちに無償で良質な保育を提供する。

保育の受け皿を確保し、保育士を大幅に増員するために、処遇の改善を行います。給与を月額10万円アップするために、毎年約5800億円の国費を投じます。保育施設には、資格をもった常勤の保育士の雇用を義務づけます。さらに政府が大規模に公共投資を行い、必要な保育サービスを確保します。

(3)医療制度をハード面、ソフト面ともに充実させ、医療従事者の処遇を大幅に改善する

国費を投じて医療施設を充実させます。補助金をつけて病床を削減するようなことは終わりにします。看護師や事務職員等についても処遇を大幅に改善し、従事者を増やし、労働時間や業務負担を削減します。

(4)教育に大胆な投資を行う!~教育従事者の大幅増員と授業料無償化で、子どもに向き合う教育を~

一人ひとりの生徒が嘘偽りなく「本当に無償で教育が受けられる」ように、保育園・幼稚園から大学まで、教育のオール無償化と質の向上を実現します。教員の人員を増やし、余計な評価のための無意味な仕事を根絶し、子どもと向き合う教育を実現します。

(5)生物多様性の保全と気候変動対策は車の両輪とする持続可能な社会へ

自然エネルギー普及と気候災害対策で重要な役割を果たす分野でもある農林水産業に対して、自由貿易主義の弊害を取り除き、経営の支援を行います。農地で自然エネルギーによる発電を行う「ソーラーシェアリング」を普及させます。先進的な森林管理技術と最先端の伐採用機器を導入し、林業の低コスト化と高付加価値化を実現します。漁業においても再生可能エネルギーとの共存共栄をはかります。

■脱原発!グリーンニューディールで「共存のための強靱な経済」を目指す[本文]

前文
私たちは、あなたの命を守り、そしてあなたの命を受け継ぐ命を守るために、闘うことを約束する。
「経済」と「環境」は対立するものと思われがちであるが、人々の暮らしの改善や雇用の拡大を目指すことと、地球環境を守ることは、何も対立しない。むしろ人間の尊厳を守るという目的は一致している。
緊縮策(「財政健全化」)と消費税の引き上げ(そして法人税減税)を要求し続けて、この国の経済を弱体化させてきた勢力と、原発や石炭火力に固執する勢力は、同じたぐいの政官財の支配者集団である(※1)。いまの政治は彼らの影響下にある。経済と環境の問題を解決するためには、政治を彼らから、私たちの手に取り戻すことが不可欠である。
地震国日本に、これからも危険な原発が居座り続けることを、私たちは許さない。他方で私たちは、人間が引き起こした気候変動の危機から目を背けることもできない。その被害は、世界的には森林火災や干ばつなどの形で、そして日本国内でも巨大台風や集中豪雨などの形で、多くの人々の命を脅かしている(※2)。2050年に温室効果ガスの排出をネットゼロ(差し引きゼロ)にすることは、すでに各国政府が表明した公式の政策となっている。ただし日本では、原発ゼロでそれを実現しなければならない。私たちは脱原発と、温室効果ガスの排出ゼロをともに実現するために、2050年までに自然エネルギー100%の社会を目指す。これは困難な課題であるが、国内外のさまざまな研究機関や環境保護団体が指摘するように、解決策は存在する。
れいわ新選組は、ここに「脱原発!グリーン・ニューディール(れいわGND)」を公表する。これは、原発を即時に廃止し、石炭火力発電を段階的に廃止し、自然エネルギー100%の社会を2050年までに実現することを目指す、総合的な環境・経済政策パッケージである。未確立の新技術にすがるのではなく、すでに世界的に普及と低価格化が進んでいる既存技術を最大限に動員する。それとともに、20年以上のデフレや、格差・貧困の深刻化、労働環境の破壊、医療・福祉制度の弱体化、地方経済の衰退といった、日本が抱える様々な経済問題の解決を、圧倒的な財政支出と民間投資によって実現する。
通貨発行権を有する日本政府が財政破綻することはない。健全財政の要件は適度な物価上昇の維持と、公平性である。日本が持つ財政の力を活用し、デフレ脱却を実現させ、産業空洞化を防ぎ、新たな内需型社会を作ろう。国の積極的投資で、生物多様性を守りつつ自然エネルギーを促進しよう。日本の廃炉技術を世界最先端にしよう。すべての人々に光熱費の安い快適な住まいにすむ権利を保障しよう。防災インフラを整えよう。命を守る医療のほか、介護・保育など二酸化炭素をほとんど出さないケアサービスを「グリーン雇用」として促進し、十分な賃金・社会保障と安全な労働条件を保証しよう。いますぐに増税をしなくても直ちに影響はない。デフレ脱却の結果として起こりうる過度な物価上昇を緩和するための、通貨を回収するための増税(所得税・法人税その他)は、別途これと並行して準備を進めよう。真の「豊かさ」「公平・公正」「持続可能性」は、あなたを徹底的に守ることからはじまる。れいわグリーン・ニューディールによって、誰も取り残されることのない「共存のための強靱な経済」を実現しよう。

1.脱原発・廃炉ニューディールで全国に安心を!地域に未来を!被害者に賠償を!

れいわ新選組は、これまでずっと掲げてきた「原発即時禁止」を、これまで以上に強く訴え続ける。自然エネルギー100%の日本経済の実現を、その普及の妨げとなっている原発を即時廃止することからスタートさせる。原発立地地域の経済を、持続可能で豊かなものに移行させるために、廃炉と将来構想のために、専門人材の雇用の拠点とする。

(1)原発は即時禁止! 政府が買い上げて廃炉をすすめてゆく

れいわ新選組は従来の「原発即時禁止・被曝させない」の原則を、さらに徹底する。大企業の支配者集団と政権は、この先、南海トラフ地震や東海地震、首都圏直下などの大地震が確実にくると言われるなか、3.11大震災の犠牲と教訓を投げ捨て、40年超の老朽原発を再稼働しようとし、さらには新規原発の建設まで目論んでいる。私たちはこれを許さない。
すでに説明の必要もないことであるが、原発は地震に弱く、ひとたび事故を起こせば広大な国土を半永久的に汚染し、人々の命や生業を奪う極めて危険な技術である。また日本列島において、放射性廃棄物の処理・処分の問題は解決策を見いだすことは極めて難しく、これ以上運転を続けて使用済み燃料を作り出すことは許されない。二酸化炭素を排出しないからと言って、原発が持続可能だとは言えない。さらに原発は、その立地も廃棄物処分場の候補地も、経済的に不利な立場に置かれた地方に押しつけているうえ、日雇い労働者に被曝労働を強いている。しかも、東電福島第一原発の事故を起こした責任のある経営者は、裁判で無罪となった。被害者への賠償は、事故を起こした会社が国から資金をもらって行っているのが実態である。これほど不公正な産業を、ほかに見いだすことは難しい。
地震国日本にとって、持続可能な経済の未来に、原発は不要である。直ちにこれを禁止する。実際のところ、2019年度実績で原発が供給したエネルギーは、電気の6.3%、一次エネルギー国内供給の2.9%に過ぎない。( EDMC(2021)『エネルギー・経済統計要覧2021』(理工図書)のエネルギーバランス表(p. 18)およびデータより計算。
)また、2014年には原発稼働ゼロでエネルギーをまかなった経験もある。原発を即時禁止しても、エネルギー供給には特段の問題はない。電力供給は主に天然ガス火力をつなぎとしながら、2050年までに自然エネルギー100%へと移行してゆく。
そこで、原子力発電所や関連施設は即時に使用を禁止するとともに、すべて政府の責任で、財政資金を用いて事業者から買い上げる。廃炉を行う国営の組織をつくり、その上で十分な国費を投じ、最先端の技術を用いて慎重に廃炉(廃止措置、解体)を進める。原発廃炉の責任を免除された電力会社は、自然エネルギー100%への転換をすみやかに進める責任を負う。

(2)原発立地地域の「公正な移行」のための「廃炉ニューディール」を!

他方で、これまで日本経済の維持に必要なエネルギーを供給してきた原発関連産業や電力会社、原発立地地域の役割を、全否定することも公正ではない。
原発立地地域に対しては、立地地域の人々を主役とし、「公正な移行(Just Transition)」の原則に沿った経済転換の政策をとる。当面はこれまでの電源三法交付金と同様の財政的支援を継続し、「脱原発!グリーン・ニューディール」の目的にそった形での産業構造の転換、および雇用の転換を後押しする。
上記の目的のために、原発の敷地には廃炉と地域経済発展のための拠点施設(※3)を設置し、廃炉技術の研究と、解体の実施の他、自然エネルギー産業や農林水産業、その他の工業やサービス業の振興など、地域の条件に見合った廃炉後の持続可能な経済発展のあり方を研究する。ここには、解体労働者や専門人材のほか、地域発展を担う人々を数百人規模で雇用する。携わる人々は公務員として雇用し、十分な賃金と社会保障、および安全な職場環境を保障する。(大まかな構想にすぎないが、全国19箇所の原発敷地内(またはその隣接地)に1拠点ずつ建設することを想定。1拠点あたり、解体関係者と研究者を合わせて300人規模で雇用し、年間600万円(令和2年の一般労働者の平均307.7万円の約2倍)の賃金を国庫から支払うとすれば、賃金だけで、一拠点あたり600[万円/(人・年)]×300[人]=18[億円/年]、19拠点で342[億円/年]の財政支出となる。)

(3)福島第一原発事故の被害者をだれも取り残さない。

本節の最後となるが、最も重要なこととして、東京電力福島第一原発事故による被災者・被害者への賠償や補償、健康管理などを継続・拡充させ、誰一人取り残されることのないようにする。 現在、事故の被害者の賠償は、実際のところは原子力損害賠償・廃炉等支援機構やエネルギー対策特別会計などを間にかませた複雑な仕組みを通じて、政府が東電に対して賠償資金を(貸し付けではなく)プレゼントする形で行われている。原発廃止後はこの機構を改組し、より透明性を高め、被害者を誰も取り残さない形で、東電と国の責任で賠償を行う仕組みを構築する。

2.脱原発と脱炭素を両立させ、日本を自然エネルギー大国に!

私たちは、気候危機の克服を目指す国際社会の動向に歩調を合わせ、日本独特の状況に鑑み、原発を即時禁止した上で、2050 年までに自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%、温室効果ガス排出ゼロを目指す。エネルギー利用効率の向上を徹底し、エネルギー消費量の 6 割削減を目指す。2030 年までに石炭火力は全廃し、発電量に占める自然エネルギーの比率を 50%まで高めることを目指す。これは決して簡単に達成できる目標ではないが、ロードマップを示している国内外の研究機関や環境保護団体は数多くある。それらの知見と経験を学びあい、それらの方々と協力し合いながら、実現を目指す。
これに際して、未確立の新技術にすがることはしない。太陽光発電や風力発電など、そのための技術は、すでに世界中で普及が進み、経済的にも劇的に安価になっているが、日本国内でも関連産業の供給体制を改善・強化し、さらなるコストダウンをはかる。その普及をさまたげる既存の技術や規制を排除してゆく。

(1)2050 年までに「原発ゼロ、自然エネルギー100%」のカーボン・ニュートラルを実現する

国(中央政府)は、未確立の技術の開発を掲げて問題を先送りするべきではない。自然エネルギーや省エネルギーについては、実証された既存技術の普及を最大限にはかるべきである。日本には、電力消費量の数倍のエネルギーをまかなうのに十分な資源ポテンシャルが存在する。これは環境省の調査報告書等でも明らかである。(環境省地球温暖化対策課(2020)「我が国の再生可能エネルギー導入ポテンシャル」PDF 資料(gaiyou3)

http://www.renewable-energy-potential.env.go.jp/RenewableEnergy/22.html

私たちは2050年までに「自然エネルギー100%」の実現を目指す。 固定価格買い取り制度(FIT)など、既存の制度を改善するとともに、新たな施策によって、自然エネルギーの資源ポテンシャルを最大限に活かす(付録1を参照)。再生可能エネルギー設備の建設に際しては、地域の人々が必ず関与するものとし、自然環境や風景を守る。送電網は所有形態を変更する(国有化も視野に入れる)。現状、日本のエネルギー自給率は極めて低いが、このことが外国からのエネルギー資源の調達に関連して、国際的な紛争の火種をつくることに加担している。自然エネルギーを増やすことはエネルギー安全保障につながり、東アジアと世界の平和と安定にも寄与する。
また、自然エネルギー100%の実現を目指すことを前提として、石油消費量を劇的に減らす電気自動車等の普及を進める。すべての自家用車が電気自動車に変わっても電力消費量は1割ないし2割程度しか増加しないと推計される。 EV-DAYSの記事(2021年4月27日)によれば、国内外の乗用車の電費は車種により131 Wh/kmから245 Wh/kmの範囲にある。2019年の実績では、旅客用の乗用車と軽自動車の走行キロ数は5464億km、総発電電力量は9708億kWhである。ここから計算すると、旅客用の乗用車と軽自動車(ここでは全て、化石燃料で走るものとみなす)が、ぜんぶ電気自動車に変わったとして、電力消費量の増分は7.4%~13.8%の増加となる。これにはバスや貨物自動車は含まれないが、2019年の総エネルギー消費量は、バスが乗用車の3.8%に過ぎず、貨物自動車が乗用車の63%に相当する。これを単純に上乗せすると、12.4%~23.0%の増加となる。データは、EDMC『エネルギー・経済統計要覧2021』(理工図書、p. 126、p. 132、p. 194)、およびEV-DAYS (2021/4/27記事)(https://evdays.tepco.co.jp/entry/2021/04/27/000008

これを国内の自然エネルギーでまかなうことは可能である。

これらの技術の普及を妨げている従来型技術や、それを温存するための政策措置や規制を排除してゆく。これらの技術については、国内の生産拠点を守り、「共存のための強靱な経済」を作る。

(2)エネルギー変革のために、10 年間で官民あわせて 200 兆円のグリーン投資を行う
~全ての人々に雇用を、すべての地域に富を、新たな技術に資金を!~

「原発ゼロ、自然エネルギー100%」のカーボン・ニュートラル実現を目指して、自然エネルギーや省エネルギーのほか、エネルギー供給インフラや脱炭素化のための新技術など、エネルギー変革に関連する分野に、10 年間で少なくとも 200 兆円(国費 5 兆円、民間資金 15 兆円)の投資を行う。これにより国内総生産(GDP)の押し上げと、毎年 250 万人分の雇用創出が期待できる(未来のためのエネルギー転換研究グループ(2021)を参照。)。これは、女性・男性に関わらず、すべての社会階層の人々に対して、あらたな良質の雇用をもたらすものでなければならない。自然エネルギーの関連設備や大型の建築物をつくるには、大企業による大量生産や、大規模な建設工事が不可欠である。しかし一方では、地域レベルの比較的小規模な太陽光・風力発電プロジェクトのほか、小規模事業所レベルや家庭レベルでの、発電設備の設置や断熱のための改修工事などは、地域の中小企業や住民の主導で実現できるものがほとんどである。こうした手作業は、今後ロボットや人工知能の普及が進んでも、人間の労働が必要なものである。
これらのビジネスチャンスを、都心部や海外の大企業がさらってゆくことなく、地域の人々が富を形成し、持続可能なエネルギーで地域経済を営めるよう、域外企業の出資に対する規制や、戦略的環境アセスメントなど、必要な規制を進める。 また、既存の原子力産業や化石燃料産業を担ってきた有能な技術者たちや労働者たちに、あらたな産業に移って活躍してもらえるよう、賃金面・社会保障面で十分なサポートを行う。とりわけ、省エネルギーや再生可能エネルギーに関しては、専門的なアドバイザーなどの人材が不可欠であるため、積極的に公費を投じて人材を育成し、公的に雇用する。 多くの分野では、太陽光や風力をはじめとする既存技術が利用可能であるが、航空機や船舶の運輸技術や、製鉄をはじめとする重工業で、技術的なブレイクスルーが必要な分野が存在する。それらについては、公的資金を投じて国内の研究機関や企業による研究開発を進める。また、希少金属などの資源の新規輸入量を可能なかぎり最小化すべく、国内の使用済み携帯電話に含まれるレアメタル、レアアースの回収やバッテリーの国内におけるリサイクル率の向上を図る。資源循環の向上を図るための技術革新にも積極的に国の研究予算を投じ、脱炭素社会の進展とともに、レアメタルなどの外国からの輸入を減らしていく。また、海外で開発されたレアメタル等の輸入を行う場合にも、輸入する日本の企業が海外の採掘における環境負荷を軽減するための支援を最大限行う。

(3) バッズ課税を、すべての人々の命と暮らしを支える再分配に活用する

日本政府は通貨発行権をもっているので財政破綻することはあり得ない。むしろ財政支出によって広い意味での貨幣が生まれる(※4)。したがって、グリーン・ニューディールを実現する上で、必ずしも税金によって財源を確保する必要はない。
しかし「共生のための強靱な経済」を実現させるためには、いわゆるバッズ課税も、重要な役割をになう必要がある。バッズ課税とは、消費や生産を減らすことが世の中にとって望ましいようなものに対する課税の総称である(タバコ税や酒税がその例である)。グリーン・ニューディールの文脈では、温室効果ガス排出に対する課税(いわゆる炭素税)が重要であるが、ほかにも、貴重な天然資源の使用に関する課税や、廃棄物に関する課税などがある。化石燃料に炭素税を課税することによって、その価格を高くすることは、自然エネルギー100%の実現を後押しすることになる(※5)。実際のところ、日本には「石油石炭税」にわずかながら炭素税が組み込まれている。 しかし一般に、エネルギー価格の上昇による負担には、消費税と同じように、低所得者ほど重くなる「逆進性」があることが指摘されている。そのため、やみくもに炭素税を引き上げることは望ましくないし、その税収を環境目的に限って支出することにも意味がない。言い換えれば、増税を目的とした炭素税は公平性の観点からみて望ましくない。
むしろ現金給付を先に行うべきである。炭素税を「炭素配当」として再分配目的に活用し、すべての人々の命と暮らしを支えるために役立てることが望ましい。炭素税から得られた税収を、人口で均等に割って、一律給付金として配るのである。逆進的な課税であっても、それを一律給付金と組み合わせれば、エネルギー消費量が平均よりも少ない低所得層は純受取となり、所得分配は改善する。(2019 年初頭に、ノーベル経済学賞受賞者や歴代の連邦準備制度理事会(FRB)総裁など、総勢 3000 人を超える経済学者たちが、炭素税を導入し、それを人々に均等割りで還付する「炭素配当」という政策を提案した。参考:「炭素配当に関する米国経済学者らの声明-米国経済学者らによる史上最大の公式声明―」長谷川羽衣子訳(https://e-miraikousou.jimdofree.com/))。
交通が不便な地域や寒冷地に住む人々にとっては、ほかの地域に比べ、炭素税によってエネルギー負担が増えることが懸念されるが、そうした地域に対しては、省エネルギー化や電気自動車等の普及のための補助金や、エネルギー供給および公共交通等のインフラ投資を、いっそう手厚くする。

3.防災と気候変動対策は地域への投資で!
~毎年10兆円の財源補助で、命を守る自治体を再建する~

小泉政権(2001 年から 2006 年)のころに典型的に見られたように、この四半世紀以上、財政支出を切り詰めて小さな政府をめざす「緊縮路線」が進められてきた。この路線は民主党政権でも変わらず、その結果、デフレ不況が続いた。そんな中で大きなしわ寄せを受けてきたのは、他ならぬ地方財政である。通貨発行権をもたない地方自治体は、経済停滞で財源が細るなか、災害対策の公共事業や医療など、命を守るための支出の削減を削らざるをえなくなっている。今すぐ、この流れを変え、必要な対策ができる自治体を再建しよう。1990 年代初頭の日本は、今よりもはるかに多くの公共投資を行っていた。少なくともその頃の水準まで公共事業を復活させ、雇用を増やそう。少子高齢化対策、災害対策、気候変動対策ができる自治体にしよう。10 兆円の財源補助で、全ての自治体を、命を守る自治体にしよう。
(『平成 30 年度 国民経済計算年報』によれば、2018 年度の日本の公共投資(一般政府の総固定資本形成)は約20.7 兆円であり、そのおよそ 3 分の 2(67%)が地方自治体によって行われている。1990 年代前半には高いときにはGDP 比 6.6%に相当する公共投資が行われていたが、2018 年には 3.8%まで低下した。国全体の公共投資を GDP 比6.6%(約 35.9 兆円)に戻すとするならば、約 15 兆円の増額であり、その 3 分の 2 に当たる 10 兆円を、全国の地方自治体に、地方交付税や補助金の形で与えることになる。残りの 5 兆円が、エネルギー変革のための国の投資額にあたる。)

(1)既存の「気候変動適応法」を機能させるべく、自治体に政策資源を提供する

私たちは、相次ぐ豪雨や土砂災害、巨大台風や酷暑など、気候リスクが世界 1 位とされる日本の現実を直視する(※6)。2018 年に制定された「気候変動適応法」を機能させ、実効性あるものとするために、省庁横断的に、全ての自治体に対して、以下のように、あらゆる政策的・技術的資源を提供する。洪水や渇水、土砂災害等の被害を最小限にするために、センサー等を備えたインフラの整備のための公共事業を行う。インターネットを通じて気象予測情報をリアルタイムで提供し、地域の危機管理に活かす。熱中症予防の情報システムの開発や、感染症の検疫体制の見直しを行う。高温耐性型の農業品種の開発・普及を進める。分散型の非常用電源ネットワークなどを導入する。

(2)災害対策、気候変動対策は自治体が主役!プロフェッショナルを育て、雇用を促進する

各自治体は、それぞれ異なる自然的・社会的条件に適した対策を、住民を主役として、主体的に実現してゆく。大地震や気候災害など、各種の災害に対処するプロフェッショナルを数多く育成し、公務員として雇用する。地震や津波による被害や、河川の洪水による被害などを、十分に予測し、住民に周知して備えを進めるための、地方および地域の防災計画のための予算を復活する。
防災インフラの改修・増強のための公共事業においては、地元の人々を主に雇用し、地元の事業者が主に工事の重要な部分を担うよう態勢を整備する。中央政府は各自治体の取り組みの主体性を尊重しつつ、これと連携し、必要な調整を行い、十分な財政支出でこれらを支える。 (インフラ投資は重要ですが、巨大ダムやリニア新幹線のような自然環境や生態系を破壊する大型工事については見直し、必要なインフラの更新、高速道路網の連結、地方公共交通機関の確保などに予算を振り向けます)
さらなる災害対策として、新たにバックアップ生産体制を構築する。例えば、南海トラフ地震で万一、太平洋側の生産拠点が大きな被害を受ける場合に備えて、十分な財政支出によって、日本海側などに生産能力を作っておくことを推進する。国内の生産・供給体制の一部が甚大な打撃を受けても、日本の物資供給に致命的な影響が生じないように、生産拠点を各地方に分散する国土計画の策定を目指します。

(3)ひとびとをケアし、暮らしの質を高めるインフラや設備を増強する

これまで医療施設や福祉施設、学校などへの投資が抑えられてきたが、これを転換する。公費を投じて、必要な施設の新規建設を進めるとともに、既存の施設は改修工事を行う。そのさい、エネルギー効率と快適性を重視する。 また各地域において、次世代のクリーン・モビリティを実現するために、鉄道・路面電車・バス網など、各地の交通システムも充実させる。電気自動車の充電設備を普及させる。その一方で、自転車や歩行者が利用しやすい道路交通体系を実現するための投資を行う。貨物輸送についても、鉄道へのシフトを促進するとともに、大型トラック等の電化を支援する。

(参考)災害発災後の対策の強化

  • 被災者生活再建支援法の支援金について増額、支給基準の見直しで速やかな生活再建を実現させます。
  • 発災、復旧、復興、それぞれの時期に必要な情報が、すべての人々に提供されることを保障します。障害者に対しても、障害者障害特性にふさわしい形態(情報保障付)で提供されるよう自治体の支援体制を強化します。
  • 体育館はあくまで緊急時の集合場所として使用し、中長期の避難所とすることを禁止する。 被災後は民間のホテルなど宿泊施設を中心に避難所として活用すると同時に、全ての自治体があらかじめ定めておいた地域にコンテナ型の仮説住宅を設置。地域のコミュニティーを壊さない形での避難と復旧作業を進める。
  • 自衛隊の災害活動として救命救助、国道などの復旧などに限定せず、民間事業者や民家に関する復旧作業にも従事、寄与できる体制を整える。
  • 災害ボランティアに関しても日給などの支払いを行い、人々の善意に頼り切った長期にわたる復旧復興ではなく、被災者が一刻も早く日常生活を取り戻せる復旧復興を行う。

4.圧倒的な国費投入で、数十万人規模の良質な「低炭素・グリーン雇用」を国内で大量に生み出す

20 年以上におよぶデフレは円高を通じて国内産業の空洞化をもたらした。新自由主義的政策によって公的サービスが削られた結果、格差と貧困は悪化している。不十分な社会保障制度のせいで多くの高齢者の生活上の不安がつのる一方で、若年層の貧困化と労働強化のせいで少子化が進んでいる。 最も大事なことは、今を生きる全ての人々のために、全国津々浦々で、良質な仕事、やりがいのある安定した仕事を大量に生み出すことである。良質でやりがいのある仕事の例として、まず挙げるべきは、私たちの社会が直面する危機を克服するための仕事であり、私たちの命を支え、新たな命を生み育てることに寄与する仕事である。
これまでに述べてきた、災害対策のための公共事業や、気候変動を止めるための仕事のほか、医療・介護・保育・教育など「人が人を支える」「グリーン産業と調和する」ケア労働も重要である。ケア労働も二酸化炭素をほとんど出さない「グリーン雇用」と位置付けられるほか、未来の社会の基盤を築く「ソーシャル・インフラ」あるいは「ヒューマン・インフラ」への投資である。こうした仕事に十分な賃金・社会保障と安全な労働条件を保証する。( 「ソーシャル・インフラ」という用語は英国労働党の経済政策ブレーンが、「ヒューマン・インフラ」という言葉はバイデン政権が用いている。参考: ジョン・マクドネル編(2021)
『99%のための経済学』堀之内出版、第 15 章; German Lopez (2021) Biden’s $2 trillion infrastructure plan, explained in 600 words, Vox, Apr 2, 2021.)
また、日本の自然を守り、食料や原材料を供給している農林水産業に携わる人々の、事業と生活の底上げをはかる。さらには、あるべき社会のイメージを絵画・造形・映像・音楽などで形にすることにも寄与する芸術分野についても、担い手の生活を公費で支える。 他方で、上述の仕事に該当しないありふれたものでも、為政者が「不要不急」とか「ムダ」とみなすモノやサービスを提供する仕事であっても、人々が求めるものを提供して正当に報われる仕事はすべて、良質でやりがいのある仕事である。あらゆる分野で、良質でやりがいのある仕事を大量に創出することは、政府が貨幣発行権を正しく活用し、積極財政を進めることによって可能である。

(1)約3兆円を投じて介護従事者の賃金を 10 万円アップし、人手不足を解消するとともに、介護保険料は減額する。

急激な高齢化に日本社会はまったく対応できていない。現在の介護人材は常勤換算で 200 万人強であるが、厚生労働省によれば、団塊の世代がすべて 75 歳以上の後期高齢者になる 2025 年度には、約 245万人の介護人材が必要となる(※7)。これを確保するために、処遇を公務員なみに大幅に改善してゆく。まずは毎年約 3 兆円の国費を投じて賃金補助を行い、介護従事者の賃金は月額 10 万円アップする。従事者の社会保障も充実させるとともに、最先端のロボットや介護用具を導入して業務負担を軽減させる。
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」に基づく厚生労働省老健局の試算では、「賞与込み給与」は、介護職員(平均年齢 43.1 歳、役職者除く)の場合 28.8 万円であり、全産業平均(平均年齢 42.4 歳、役職者除く)の 37.3 万円よりも約 8.5 万円低い(「訪問介護・訪問入浴介護の報酬・基準について」、社保審・介護給付費分科会第 193 回、令和 2 年11 月 16 日、資料 13、p. 8)。これを参考に、十分な人材確保のために 10 万円相当の賃上げを行うものとする。245 万人に対して、必要な公的資金は約 3 兆円となる。
他方で、現行制度の下では、高齢化が進んで介護保険の利用が増えることで、第二の税ともいえる介護保険料がどんどん上がっていて家計を圧迫している。また、介護を必要とする独居高齢者が多い地域に住む市民の負担が大きくなる仕組みとなっており、公平性にも問題がある。介護保険の財源の国費割合を大幅に増やし、この問題を解決する。 介護保険料は、2000 年には全国平均 2911 円だったものが、2021 年には平均 6014 円となり、2 倍以上に負担が増加した。厚生労働省「第8期介護保険事業計画期間における介護保険の第1号保険料及びサービス見込み量等について」2021 年 5 月 14 日(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_18164.html

(2)保育従事者の人数を約 60 万人まで増やすために、毎年 7200 億円を投じて給与を月額 10 万円アップし、公務員なみの待遇を保障する。全ての子どもたちに無償で良質な保育を提供する。

ひとびとが安心して働き、命をつないでゆくためには、充実した保育が不可欠である。厚生労働省が2020 年末に発表した「新・子育て安心プラン」では、2021 年から 2024 年までの 4 年間で、追加的に14 万人分の保育の受け皿を確保するとしており、そのためには保育士も大幅に増員することが必要となる。しかし、保育士の給与も介護の場合と同様に低く、担い手を十分に確保するためには、処遇の改善が不可欠である。保育は子どもたちの命を預かり、一人ひとりに必要なケアを行う、高度な技能を要する職業である。私たちは、保育従事者の人数を(常勤換算で)現在の約 48 万人から 60 万人まで増やすために、給与を月額 10 万円アップすべく、毎年約 7200 億円の国費を投じる。
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」によれば、「賞与込み給与」は、保育士(平均年齢 36.7 歳)で 30.3 万円であり、全産業平均(35~39 歳)の 37.3 万円よりも約 7 万円低い。それを十分に上回る賃上げとして 8 万円の補助を行う。厚生労働省資料「保育士の現状と主な取組」(令和 2 年 8 月 24 日)によれば、保育従事者数は 2018 年で約 58 万8 千人(p. 22)、常勤換算で 47.9 万人であったが、これを常勤換算で 60 万人まで増やすものとする。これに必要な資金は7200 億円となる。
また、非常勤の保育士で十分とするような規制緩和を行うのではなく、資格をもった常勤の保育士の雇用を義務づける。また、政府が大規模に公共投資を行い、必要な保育サービスを確保する。 なお、現在の日本では、厚生労働省が管轄する保育園、文部科学省が管轄する幼稚園、内閣府が管轄する認定こども園が縦割りで区別されており、そのことによる弊害も指摘されている。子どもの育ちを根幹に据えて、縦割り行政の弊害を解消する改革を行う。

(3)医療制度をハード面、ソフト面ともに充実させ、医療従事者の処遇を大幅に改善する

コロナ禍によって日本の医療制度の脆弱さが明らかとなったが、それはこれまで行われてきた緊縮財政路線による医療費切り詰めの影響が大きい。それどころか、コロナ禍の中でも補助金をつけて病床を削減するようなことが行われている。その一方で、診察費の自己負担率は上昇し続けている。 私たちはこの間違った医療政策を大きく転換する。国費を投じて医療施設を充実させる。 看護師や事務職員等についても処遇を大幅に改善し、従事者を増やし、労働時間や業務負担を削減する。

(4)教育に大胆な投資を行う!
~教育従事者の大幅増員と授業料無償化で、子どもに向き合う教育を~

国(中央政府)や一部の地方自治体が進めている「私学無償化」の裏で、公立学校の廃止と教師の人件費削減が進行している(※8)。 また、私立高校の授業料が「無償化」されたと言っても、入学金や、制服などの費用、修学旅行代などは自己負担のままであり、公立高校よりもずっと高額なままである。重要なのは、一人ひとりの生徒が、嘘偽りなく「本当に無償で教育が受けられる」ことである。そのために私たちは、保育園・幼稚園から大学まで、教育のオール無償化と質の向上を実現する。教員の人員を増やし、余計な評価のための無意味な仕事を根絶し、子どもと向き合う教育を実現する。
文化芸術分野は「低炭素産業」です。フランスで実践されている「カルチャーパス」のような18歳の若者に一定の金額(例えば 5 万円程度、年間約 580 億円程度)の文化芸術鑑賞の無料券を配布し、若者に文化芸術に親しんでもらうとともに、結果的には文化芸術の担い手の支援となる施策を行います。GND の予算の枠内で、文化芸術産業に対する担い手支援の予算を確保していきます。

(5)生物多様性の保全と気候変動対策は車の両輪とする持続可能な社会へ

農林水産業は気候変動によって大きな影響を受ける産業部門である。他方で、自然エネルギー普及と気候災害対策で重要な役割を果たす分野でもある。 日本の農業は、TPP や RCEP への加入など、行き過ぎた自由貿易主義による誤った政策によって、すでに経済面での危機にさらされていたが、今後は気候災害などによって、さらなる経済的打撃を受ける可能性がある。他方で、農業は高齢化と担い手不足という問題も抱えている。私たちは、戸別所得保障をはじめとする資金面での手当てと、省力化のための最新技術の普及によって、農業者の経営を支援する。また、営農しながら農地で自然エネルギーによる発電を行う「ソーラーシェアリング」を普及させる。
林業においては、先進的な森林管理技術と最先端の伐採用機器を導入し、低コスト化と高付加価値化を実現することによって、持続可能な林業で良質な雇用をつくる。森林資源を木材と、バイオマス・エネルギー源としてバランス良く活用する。公の責任で、森林の水源涵養機能を高め、洪水リスクを低下させる。公の責任で里山を保全する。現在はボランティア頼みの地域の集落の林や森(里山)の保全についても意欲ある若者を中心に地方自治体がしっかり雇用して、林業振興とともに継続的に山や森を守る仕事に従事していただけるようにします。( 山岳国である日本においては、持続可能な林業のあり方はオーストリアの事例に学ぶことが多い。参考: 青木健太郎・植木達人(2020)『地域林業のすすめ 林業先進国オーストリアに学ぶ地域資源活用のしくみ』築地書館。)
地球の温暖化は海の水温や酸性度を変化させ、漁業にも影響を与えると考えられている。魚種の分布域の変化や、温度変化にともなう生育環境の変化や寄生虫等の繁殖などに対して、漁業者が十分に適応できるように、国費を用いて支援する。また、洋上風力発電等が漁業と共存共栄し、漁業者にも利益をもたらすものとなるよう、施策を講じる。 水産庁(2018)『平成 29 年度 水産白書』、第 1 章第 2 節(3)「海洋環境の変化と水産資源との関連」を参照。

【付録 1】

「原発ゼロ、自然エネルギー100%」のカーボン・ニュートラルを実現する政策・技術一覧

<数値目標>

  • 温室効果ガス排出量は 2030 年までに半減し、2050 年までにゼロにすることを目指す。
  • 2050 年のエネルギー供給は 100%を自然エネルギーでまかなうことを目指す。
  • 石炭火力発電所の新設を禁止し、2030 年までに石炭・石油火力発電所の運転を終了する。
  • 2030 年および 2050 年まで、10 年ごとの、各種の自然エネルギー(太陽光、風力、水力、バイオマス、地熱等)の導入目標を定める。国内の資源ポテンシャルに照らして、持続可能性を保ちつつ最大限の導入をはかる。
  • 暮らしの質を高めながら、経済全体のエネルギー消費量を、2030 年までに 4 割削減し、2050 年までに 6 割削減することを目指す。

<規制的政策>

  • 国内の金融機関や投資機関が、外国の石炭火力発電所建設に融資・投資することを禁止する。
  • 固定価格買い取り制度(FIT)を改善し、地域社会や環境・景観等に配慮しながら最大限の再エネ導入を実現するとともに、電力消費者の負担を最小化する。
  • 送電網が公正に活用されるよう、送電網の所有権分離を徹底する。必要ならば政府はこれを国有化し、公共投資によって最先端の送電網の建設を進める。
  • 自然エネルギーを活用する新電力を支援するために、送電網のルールは抜本的に見直し、優先接続や優先給電を保証するとともに、連携負担金や発電側基本料金のあり方を見直す。
  • 自然エネルギーの導入に関して、渡り鳥の飛行ルートや森林などの自然環境の破壊を防ぎ、地域社会との摩擦を防ぐためのルール(ゾーニング等)を整備する。

<地域開発>

  • 世界風力エネルギー協会(WWEA)のコミュニティ・パワー三原則(地域のオーナーシップ、議決権、利益還元)に則り、コミュニティ・パワーを増やす。
  • 大規模な送電システムのみならず、小規模の分散型送配電を推進するとともに、自然エネルギーによる水素の製造や蓄電池など、各種エネルギー貯蔵技術の普及を推進する。自家発電と非常用電源の活用を推進する。
  • 工場やごみ焼却施設の排熱や余剰温熱・冷熱を利用する「地域熱供給システム」を各地に普及させる。そのためのインフラ投資を行う。
  • 都市部だけでなく地方においても、効率のよい公共交通網を充実させる。

<エネルギー効率のよい快適な住宅に住む権利>

  • エネルギー100%自給型の快適な公営住宅を大量に建設し、高齢者・単身者などの住まいの権利を保障する。新規建設および既存の住宅やビルの断熱化を義務づけ、省エネ設備設置への支援を拡大する。

<交通分野>

  • 交通の脱炭素化のために、最先端の技術を開発・普及させる。2030 年には保有車の 20%、2050 年には100%を電気自動車や水素燃料電池自動車などを含む排出ゼロ自動車とする。充電設備を普及する。
  • 鉄道・路面電車・バス・タクシー等、地域に適した様々な公共交通を充実させる。
  • 自転車利用を促進する。

<技術開発>

  • 最先端の ICT 技術によりエネルギーの需給を最適化させる。
  • 未確立の技術に対しても、公的資金と民間資金を活用して官民共同で技術開発を行う。

【文中注釈】

(※1)日本経団連の提言等の主張は明確である。若干の例を挙げれば、消費税増税と法人税減税を求めた提言として、民主党政権時代に出された「成長戦略の実行と財政再建の断行を求める」(2012 年5 月15 日)がある。石炭火力の維持と国際展開の意思を示したものに「パリ協定に基づくわが国の長期成長戦略に関する提言」(2019 年3 月19 日)が、「最近において、原発の寿命延長や新増設方針を求めたものに「電力システムの再構築に関する第二次提言」(2021 年3 月16 日)がある。

(※2)温室効果ガスの排出量を劇的に削減しない限り、状況はさらに悪化を続けると予想される。参考:環境省(2018)「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)「 1.5°C特別報告書(*)」の公表(第48 回総会の結果)について」平成30 年10 月7日(http://www.env.go.jp/press/106052.html)。次の書籍も参照: デイビッド・ウォレス・ウェルズ(2020)『地球に住めなくなる日 「気候崩壊」の避けられない真実』NHK 出版 (https://www.nhk-book.co.jp/detail/000000818132020.html)。

(※3)学際的な研究所のほか、大学のキャンパスのような教育機関の設置も考えられる。

(※4)ここでいう貨幣はマネタリーベース(現金と日銀当座預金)およびマネーストック(現金と銀行預金)の両方をさす。例えば政府が人々の銀行口座に給付金を振り込むと、日銀当座預金と銀行預金が生まれる。参考: 朴勝俊・山森亮・井上智洋(2012)「99%のためのベーシックインカム構想」薔薇マークキャンペーンHP (https://rosemark.jp/2021/04/06/2021040602/)。

(※5)ちなみに、2019 年の二酸化炭素排出量は10.6 億トンと推計されているので、仮に二酸化炭素1 トンあたり1 万円の課税をすれば、10.6 兆円の税収となる。2030 年に排出量が目標どおり60%減少するならば、税率がそのままなら税収は約4.2 兆円まで減少する。

(※6)ドイツのNGO「ジャーマンウオッチ」による評価。アジア経済ニュース「気候リスク指数で日本ワースト、比が2位」2019/12/06 (https://www.nna.jp/news/show/1982959)。

(※7)参考: 厚生労働省老健局(2019)「介護人材の確保・介護現場の革新(参考資料)」社会保障審議会介護保険部会(第79回)参考資料、令和元年7 月26 日(p. 7)。 2

(※8)文部科学省「学校基本調査 年次統計」(e-Stat データベース)によれば、平成時代以降は公立の小・中・高校の数は一貫して減少している。

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