「れいわ新選組」は28日、障がい者の自立支援団体「自立ステーションつばさ」事務局長の木村英子(きむら・えいこ)氏を7月の参院選に向けた3人目の公認候補予定者として発表した。東京・四ツ谷の事務所で開いた記者会見で木村氏は立候補の理由について、「障がいを持った当事者の現状を直接国会に訴えたい」と語った。
詰め掛けた報道陣に山本太郎代表は、「生産性で人間の価値が計られる社会になっている。これによって苦しみ、命を絶つ方々もいる。会社の役、国の役に立ってるかという空気がまん延する世の中はまさに地獄。この状況を変えなければ」と切り出した。
「人間は存在するだけで価値あるものとの考えに基づいて政治は行われるべき。今の状況を変えるために政治はある」と登場を促す。パテーションが外され現れたのは、電動車いすに乗った木村氏だった。
まず、3年前に山本代表の後援会の総会に参加したときの山本代表の印象について、「公約の中に障がい者施策がないから、入れてくれと言ったら、みんなの前で必ず入れることを約束してくれたことが心に残っている」と吐露した。
木村氏は自身が生後8カ月のとき、歩行器ごと玄関から落ちて脳性まひなど重度の障がいを負ったことを明かした。親が介護できなければ一生施設に閉じ込められる環境の中で、施設入所を拒み、自立生活を始める。以後、仲間と共に障がい者運動に携わってきた。
「施設では自由がなく管理され、虐待を受ける。でも、障がい者が地域で生きるには、運動をしなければ命すら保証されない」と深刻な現状を告発する。
立候補を決めた理由について、「障がい者運動をする中で、太郎さんから『障がいを持った当事者の現状を直接国会へ訴えていてほしい。一緒に戦おう』と声を掛けられた。厳しい現状を強いられている仲間たちの苦悩と叫びを、私が障がい者として政治に参加し、少しでも伝えていけたら」と語った。
記者から、「車いすで国会に入れるのか」との質問があった。山本代表は受け入れ体制が整っておらず、介助者の入場も許されない状況を説明し、「700人も議員がいて、当事者が一人も入っていない。これが全て」と問題提起した。
その上で、「当事者抜きで当事者のことが決められている。国がやって来たことはバリアフリーでも何でもなく、バリアの中に閉じ込めること。企業側の代弁者は山ほどいるのに、苦しんでいる多くの人の側に立った当事者は一人もいない」と語気を強めた。
障がい者施策について、すぐに改めるべき点と、今の良い点を問われた。木村氏は「介護保険に障がい者施策を統合していく流れが年々ひどくなっている」と述べ、2005年の「障害者自立支援法」以来、介護時間を減らされたり、介護事業者から派遣されるヘルパーが高齢者対応中心になっている問題などを挙げた。
良い点については「ほとんどない」としながらも、「障害者差別解消法が施行され、障がい者を少しずつ理解する自治体が増えてきた」と、店舗や交通機関でスロープが提供されるなどの改善を挙げた。一方で、「ハード面は良くなっているが、健常者と障がい者の間の心のバリアが取り払われない」と述べ、障がい者が外に出られる社会環境の整備の重要性を強調した。
山本代表は2013年に参院議員になってから、木村氏と共に厚労省と数多くの交渉を重ねてきた。あるとき、20人近くの車いす利用者で委員会質疑を傍聴したいと言われた。「無理だろう、何とかならないか」と促したら、「そうじゃない。私たちが関わる法案に対し、当事者が行く配慮が必要」と交渉を迫られ、委員会を開催する部屋の変更を実現した。
「ハッとしました。自分は永田町の論理でしか物事を考えられていなかった。木村さんは私の中で先生」と山本代表。さらに「失礼な言い方だが、初めて会ったときは腫れ物に触れるようなやり取りであった、と明かした。今まで接したことがないから」と振り返り、
この会見の冒頭で記者たちから質問が出ずに沈黙があったことに言及した。
「最初はUFOか何かが通ったかのように見える。記者も何から聞いていいか分かんないよね。全ては健常者と障がい者が分けられたことが原因」と補足した。
山本代表は、木村氏から「私が出ることで太郎さんがたたかれないか」と心配されたことを明かした。「障がい者を利用して」と。これに対し、「私は上等だ。障がい者を利用して障がい施策を変えていく」と応じたという。山本代表は、「ハードルは高いが、そこに勇気を持って一歩踏み出していただいた。この勇気を絶対無駄にしたくない」と覚悟を見せた。
木村英子
横浜市生まれ、54歳。
全国公的介護保障要求者組合・書記長
全都在宅障害者の保障を考える会・代表
自立ステーションつばさ・事務局長