【談話】「ゼレンスキー大統領演説を受けて」れいわ新選組(2022年3月23日)

3月23日に衆議院議員会館国際会議室で
ゼレンスキー・ウクライナ大統領の演説が行われ、れいわ新選組として参加した。
この演説が行われたことについて、
そして演説の内容について我々の見解を述べておきたい。

ゼレンスキー演説の内容について

我々は、軍事侵攻を受ける国の首脳として同大統領が他国に連帯と行動を求めることは当然と理解する。しかし、その要求に対して日本の国会として拙速に反応すべきではないと考える。

しかし演説が始まる前から、式次第(進行表)には演説後にスタンディングオベーション(起立拍手)するよう書かれていた。演説の内容を知る前から反応の仕方まで決められているのは、問題である。 ※式次第画像(←こちらをクリック)
 
ゼレンスキー氏は今回の演説で、アジアでは日本が他国に先駆けて対ロシア制裁を導入したことを評価した。そして日本に対し、ロシアとの貿易禁止やロシアからの企業撤退など、さらなる制裁の強化を求めた。衆参両議長を含む全参加者が起立して拍手する場面が、切り取られて放送された場合、外国では、日本がさらなる制裁に向けて足並みをそろえる姿勢と受け止められる可能性もある。
日本は独自の立場を貫き、制裁の強化拡大に安易に加わるべきではない。「新米国安全保障センター(CNAS)」の報告書によれば、米国が制裁により目的を達成できた事例は36%にとどまる。さらには、ひとまず目的を達成した場合でも対象国の長期的安定にはつながっていないという。
国際紛争を解決する手段として武力の行使と威嚇を永久に放棄した日本の行うべきは、ロシアとウクライナどちらの側にも立たず、あくまで中立の立場から今回の戦争の即時停戦を呼びかけ和平交渉のテーブルを提供することである。国際社会の多くの国家がその努力を行わない限り、戦争は終結しない。

政府に対する緊急提言

ゼレンスキー氏もその演説で言及した通り、ウクライナ国内からは戦火を逃れ多くの市民が隣国に避難している。国連によれば、ロシアの侵攻に伴うウクライナ国内外の避難民は1000万人を超え、これは人口約4200万人のウクライナ国民の約4人に一人が避難を強いられていることになる。
だからこそ、日本は、最大限に国をあげて、東欧の周辺国を支援するとともに避難民を受入れることを表明するほかない。選択肢はほかにない。軍事支援はできないが非軍事的な力で最大限の人道支援を行動で示すことが日本の取る道である。それを実現するために、次のことを提案する。
1、ウクライナ周辺国への支援を急げ
東欧の国々は同胞意識と連帯感から官民による支援を広げているが戦争長期化に伴う負担は日に日に増大している。日本から周辺国に向けた財政支援や医療物資の提供を急ぐべきである。災害大国である日本は、避難所のノウハウや仮設住宅などの資材や物資などの支援も可能なはずである。
2、民間の力も活用し国の責任でウクライナ避難民受入れ拡大を 
政府は18日、「ウクライナ避難民対策連絡調整会議」の初会合を開いたが内容が見えてこない。出入国在留管理庁によると、20日時点で避難民151名が入国している。一千万を超える避難民がいる中では、少なすぎる、遅すぎる対応である。船をチャーターすれば一名当たり低い費用で大勢を日本に招くことができるし船内での医療や休養も可能である。また、滞在に関して在留期間、受入れ先の確保、住居、日本語教育、就労支援、社会保障の付与などを早急に示し、政治主導で官民あわせた協働体制を組むべきである。災害支援や難民支援に詳しいNGO人材を政治任用してパートナーとし、企業や自治体の協力を仰いでいけば、ウクライナへの侵略戦争に心を痛める日本の多くの人々の積極的な支援を得ていくことができるだろう。

ゼレンスキー氏は演説の中で、「人口が減った地域の復興を考えないといけない。避難した人たちが、ふるさとに戻れるようにしなければならない」と述べた。日本は災害復興のノウハウを持っており、その点で協力できると考える。復興を実現させるためにはまずはいち早く停戦しなければならない。

そのためにも、戦争により命を失う人々を少なくする必要があり、国際社会が仲介する形での早期の停戦実現が必要だ。日本がその一翼を担う覚悟を示す事が重要だ、と私たちは改めて訴えたい。

補足【開催・出席自体の是非】

紛争当事国一方の首脳だけに、日本の国会議員に向けた演説機会を設けることに、
賛否の意見があることを承知している。

これまで紛争当事国の首脳が国会演説を行った事例はない。
出席すべきではないという意見もあった。

れいわ新選組からは、
会派への割り当てに従い参議院議員一名、衆議院議員二名が出席した。

軍事侵攻を受け苦しい状況にある国の首脳の意見を知る機会を作る取り組みとして、このような演説を聞く機会を設定することに、一定の意義を認めるからだ。しかしこれは、同大統領の演説を「本会議場ではなく、議員会館会議室で行う」という条件を加味しての判断である。
今回、ゼレンスキー大統領のオンライン演説を本会議場では行わなかった。出席も任意であり、全議員の出席は前提としない形式であった。「本会議場を使用しない」という決定には、重い政治的意味合いがある。これまでの先例から見て、本会議場で外国首脳が演説を行う場合、それはその外国首脳が国賓として招かれた場合に限られている。もしゼレンスキー氏の演説を本会議場で行うなら、それは日本がゼレンスキー氏に国賓同等のステータスを与えることを意味する。
これから停戦交渉を進めていかなければならない状況で、紛争当事国一方の首脳だけを国賓として迎えることの影響を考慮しなければならない。国賓として演説の機会を与えた場合には、招いた側の日本の議会として、演説内容への応答も求められることになる。
今回使用した議員会館の会議室は、日頃、様々な立場の市民団体や海外ゲストによる意見表明や議論の場として提供されている。この「開かれた」施設において、停戦に向かうための様々な意見の一つとして、当事国首脳の意見表明が行われることは、容認できると判断した。この意味で、「ゼレンスキー氏の演説を拒絶はしないが、本会議場では行わない」という今回の決定を賢明なものと評価する。


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