れいわ新選組は本日、衆議院本会議において「生活衛生関係営業等の事業活動の継続に資する環境の整備を図るための旅館業法等の一部を改正する法律案」(略:旅館業法の一部改正案)に反対しました。
当初、新型コロナウイルス感染症対策の一環として提出されましたが、感染症法上の位置付けが5類に移行されたことから、法案の立法事実がないと判断しました。
また、衆議院厚生労働委員会の審議の過程で、閣法に盛り込まれていた宿泊拒否事由の中から「感染防止対策への協力に対して正当な理由なく応じない場合」が削除されるという修正が行われたものの、恣意的判断によって差別的な宿泊拒否が行われる可能性は残されたままです。現実に、ハンセン病回復者への宿泊拒否、補助犬を伴う障害者や電動車椅子を使う障害者への宿泊拒否などがあることから、この改正によって状況が悪化する可能性が高いと考えます。
そもそも、旅館業法において宿泊業者は、原則として宿泊拒否はしてはならないとされてきました。旅館業には、すべての人、とりわけ弱い立場にある人が路頭に迷うことを防ぐ公的役割があるからです。宿泊拒否ができない縛りがあることで、短期的な効率のみを求める宿泊業者をうみださない歯止めとなります。それは結果として、すべての人が宿泊を拒否されずに安心して泊まれるという国民全体の社会的なインフラであるといえます。
さらには、コロナ禍において、2020年、新型コロナウイルス感染症がまん延する中国武漢市からの帰国者を、国の要請のもとに受け入れた千葉県勝浦市のホテルの勇姿が思い起こされます。また、全国の宿泊業者の協力のもとで成し遂げられた宿泊療養の取り組みを忘れてはなりません。
今回の改正案は、残念ながら、その逆を行くものです。例えば、障害者等への合理的配慮の内容によっては、宿泊業者が「過重な負担」と受け取り、「他の宿泊者に対する宿泊サービスの提供を著しく阻害するおそれのある求めである」と判断することにより、宿泊拒否が横行しかねません。
合理的配慮とは、まず配慮を要する当事者と宿泊業者との対話により実行されるべきものです。改正案では、配慮を必要とする場面で、当事者からの要望が威圧的言動や長時間の拘束と捉えられ、対話の余地もないまま宿泊拒否事由となる危険性があります。改正案は、障害者差別解消法の趣旨から逸脱するものです。また「過重な負担」の範囲を、旅館業法に基づく省令やガイドラインで当事者抜きに定めうる今回の改正案は、障害者等の主権を奪うことになります。
また、日本の感染症対策の基本をなす感染症法は、ハンセン病回復者やHIV陽性者等に対する偏見差別が存在した歴史的事実を教訓として制定されました。同法において、国及び地方公共団体の責務、国民の責務として、感染症患者等への人権の尊重が明記されていることからも、改正案は、同法の原則からも逸脱するものと言えます。以上のことから、私たちは改正案を容認できず、反対しました。
今後、あらためて旅館業の公的役割を認識し、政府の責任のもとで、誰もが安心して泊まれる法制度と社会インフラの実現を求めていきます。
2023年5月30日
れいわ新選組