戦後最悪の人権侵害である旧優生保護法によって、長きにわたり苦しめられ、人権を奪われてきた被害者の方々の訴えに対して、司法の最終判断が7月3日と4日の両日にわたって示された。
最高裁大法廷は3日、旧優生保護法に基づく強制不妊手術(優生手術)に関する5件(※1)の訴訟すべてにおいて、原告勝訴の判決を出した。「旧優生保護法は違憲」と明確に示し、「手術から20年という『除斥期間』が経過しているため損害賠償請求権は消滅している」という国の主張を斥けた。札幌、東京、大阪、神戸の4つの訴訟に関して1,100万円~1,650万円の損害賠償を国に命じ、仙台高裁には裁判のやり直しを言い渡した。
またこれとは別に最高裁小法廷は4日、原告勝訴の2審判決を不服として国が上告受理を求めていた仙台高裁と大阪高裁の事件についてもこれを却下した。
れいわ新選組は最高裁のこれら判決ならびに決定を高く評価する。同時に、この訴訟に死力を尽くしてきた原告、弁護団、支援者の方々に対して心から敬意と祝意を表したいと思う。また本判決を受け取ることなく亡くなった原告の方々にも哀悼の誠を捧げる。
私たちは政府・与党に対し一貫して被害者との面会・謝罪、上訴取り下げ、早期全面解決を訴えてきた。しかし、政府は「除斥期間の問題は他の事案にも及ぶため最高裁の判決を仰ぎたい」旨主張し、解決への道を閉ざして被害者の方々にさらなる苦しみを与え続けた。この点においても岸田総理の責任はきわめて重い。
旧優生保護法は日本初の議員立法として1948年衆参両院の全会一致で成立した。「不良な遺伝子を持つ人間の出生を根絶する」という優生思想の下、これまでに少なくとも25,000人に対して強制不妊手術をはじめとする非人道的施策を繰り返してきた。
1996年に優生条項をなくし母体保護法に改正した際も、旧優生保護法による被害に対して国会・政府からの謝罪・補償の動きはなかった。そのため今なお、優生思想は根絶されていない。
今なお、50万人以上の障害者が入所施設・精神科病院で暮らさざるを得ないなか、施設では女性障害者が「どうせ子どもを産めないんだから、周りに迷惑がかかる生理なんてない方が良い」と職員に暴言を投げつけられる。強制不妊手術を認める法律がなくなっても、当事者は「いっそのこと生理なんかなければいいのに」といった思いを抱かせられ、人間としての尊厳を奪われる。このような日常化された重大な人権侵害が、実際に行われてきた。
2019年にようやく議員立法で旧優生保護法一時金支給法(※2)が成立した。しかし、強制不妊手術の責任主体が曖昧であり、救済額も一人320万円と、事案の重大性・深刻性と大きく乖離する内容のまま、今国会で期間延長の法改正が行われた。一時金の認定人数は1000人強にとどまっており、未だに多くの被害回復がなされていない現状にある。
旧優生保護法を成立させ、改正後も十分な被害回復を行なってこなかった立法府の責任はきわめて重い。しかし、ここで立法府「総ざんげ」で、みんなで反省したフリをして、終わらせてはいけない。今なお優生思想をうみ出し続ける国会こそが問題であり、その優生思想を終わらせる政党としてれいわ新選組は誕生し、これからも闘う。
今回の最高裁判決を受け、政府・国会による真摯な謝罪、全面解決に向けた基本合意の締結、全被害者に対する十分な賠償・補償のための法整備、優生思想根絶のための恒久対策などが早急に求められる。
本判決の補足意見として草野耕一裁判官は旧優生保護法成立の経緯を踏まえながら次のように述べている。
「違憲であることが明白な国家の行為であっても、異なる時代や環境の下では誰もが合憲と信じて疑わないことがある」
私たちはこの言葉の意味を今いちど深く受け止めなければ、優生思想は今この瞬間も、そして未来においても、大多数の賛同もしくは無関心によって温存・再生産される。
優生思想が現存する社会は、全ての人にとって生きづらい社会である。
障害当事者議員を擁するれいわ新選組は、全ての人が生きているだけで価値があると思える社会をつくるため、優生思想の根絶に向けて、みなさんとともに闘う。
2024年7月6日
れいわ新選組
(※1)2022年2月22日大阪高裁、同年3月11日東京高裁、2023年3月16日札幌高裁、同年3月23日大阪高裁、同年10月25日仙台高裁
(※2)旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律