【声明】ロシアに対するWTO最恵国待遇適用停止を可能にする法改正を受けて れいわ新選組 声明(2022年4月14日)

本日4月14日、衆議院本会議でロシアに対するWTO最恵国待遇適用を停止するための関税暫定措置法改正案が採択された。他会派がすべて賛成に回る中、れいわ新選組は本改正案に反対した。

これまでも繰り返し述べてきたとおり、我々は本年2月24日に始まったロシアによるウクライナへの軍事侵攻を最も厳しい言葉で非難する。日本政府に対して中立的立場で停戦交渉の促進を働きかけるよう要請し、故郷を追われたウクライナの方々への人道支援の拡充と、難民としての受け入れの拡大を求めてきた。キーウ周辺地域を中心に報じられている住民虐殺の実態については、国際機関による調査を進め、戦争犯罪に加担した者に対して法に基づく処罰を求める。 

我々の基本的立場をこのように述べたうえで、この法案への反対理由を説明する。
本法案(WTO最恵国待遇適用停止)を短く説明するならば、
「停戦を実現する効果はない」と分かっていながら、日本国内における事業者の首を絞めつつ、戦争指導者にはほぼ影響のない制裁を強化しようとするものである。

反対する理由は三つ。
1.日本国内の事業者や人々への打撃が大きい。
2.影響を受ける事業者に対する経済的補償策が定められていない。
3.これら制裁措置で「軍事侵攻を止める」見通しが、全く見えない。

一つ目の理由は、これまでのロシアに対する制裁措置が、すでに日本国内の事業者に無視できない打撃を与えていることだ。今回、最恵国待遇を停止することで関税が上がるのは、カニやサケなど一部品目に限られることから、岸田首相は「影響は限定的」と述べた(4月12日衆議院本会議)。しかし関税の上がる品目を主力商品として扱っている事業者にとっては、コロナによる長引く不況の中でとどめの一撃ともなりうる。
さらに、影響を受けるのは一部の輸入事業者だけではない。帝国データバンクが4月6日に発表した「ロシア貿易」状況調査によれば、ロシアと直接・間接的に取引関係を有するサプライチェーンは、全国で最大1万5287社に上ることが分かっている。ロシア側も木材の輸出禁止や、漁業交渉の引き延ばしなど、様々な形で制裁への対抗措置を講じている。ロシアと取引関係にある国内事業者は、今後さらなる苦境に立たされることが予想できる。さらに、これら事業者の商品やサービスを利用する消費者にも影響が及ぶ。

二つ目の理由は、影響を受ける事業者に対する経済的補償策が定められていないことである。これらロシア制裁強化で打撃を受ける国内事業者への重点的な補償を約束する言葉は、岸田首相からは発せられていない。軍事侵攻を行った国を罰するためなら、一部の国内事業者の破綻には目をつぶる。そのような姿勢と受け取らざるを得ない。

三つ目の理由は、これら制裁措置で政府が掲げる「軍事侵攻を止める」という目的を実現する見通しが、全く見えないことである。松野官房長官は、対ロシア経済制裁の目的を「一刻も早い停戦を実現し、侵略をやめさせるため」と語り、岸田首相は「非道な侵略を終わらせ、平和秩序を守るための正念場だ」と制裁に理解を求めている。政府はこれまでの経済制裁が「軍事侵攻を止める」目的の実現にどれだけ効果があり、今回の最恵国待遇停止でその目的の実現にどう近づくのか、明確に説明しなければならない。しかし、これについて納得のいく説明は得られなかった。報道によれば、今回の最恵国待遇停止で「全体として大きな制裁効果は見込みにくい」と経済官庁幹部が認めてしまっている(2022年3月15日毎日新聞)。

冒頭に述べた通り、政府は「停戦を実現する効果はない」と分かっていながら、日本国内における事業者の首を絞めつつ、戦争指導者にはほぼ影響のない制裁を強化しようとしている。この措置により軍事侵攻に反対する一般のロシア市民にも悪影響を及ぼすことを忘れてはいけない。
米国では複数のシンクタンクが、経済制裁によって対象国の軍事行動を止める効果はないことを指摘してきた。広範囲に事業者を苦しめずとも、軍事侵攻や戦争犯罪の責任者に的を絞った制裁で強い非難のメッセージを送ることは可能である。

日本政府に対しては、実施した制裁と対象国からの対抗措置が国内事業者に及ぼす影響を綿密に調査し、十分な補償策を用意することを求める。それとともに、これまで実施した経済制裁措置が、政府の掲げる「停戦、軍事侵攻の停止」という目的の実現にどれだけ貢献したのか、検証し説明することを求める。

なお、同時に提出された外為法改正案は、特定の制裁対象者・企業に絞って暗号資産の移転取引を規制するものであり、広く一般市民の経済活動・生活に影響を及ぼすものではないため、賛成した。


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