れいわ新選組は衆議院での「北朝鮮による弾道ミサイル発射に抗議する決議案」に賛成した。
北朝鮮による弾道ミサイルの発射は国連安保理決議違反である。「これらの高い頻度で続く一連の挑発行動は、国際社会に対する深刻な挑戦である」という決議文の主旨に賛同する。
しかし、決議文のなかには国際的な緊張をあおる表現、外交的な問題解決に逆行する表現があり、この決議の問題点を述べておきたい。
この決議の何が問題なのか。
まず一つ目の問題点は「青森県付近の我が国上空をミサイルが通過」という表現である。「上空」といえば、青森県のすぐ上をかすめてミサイル発射が行われたように聞こえる。しかし今回発射されたミサイルの高度は1000km。青森県上空というよりは宇宙空間を通って太平洋上に落ちた、というのが現実である。高度1000kmを「我が国の上空を通過」と呼べるのだろうか。領空の定義について,かつて政府は「大体上空九十キロとかあるいは百十キロ、が討議の中心」と答えている(第107回国会 参議院 内閣委員会 第3号)。「我が国上空をミサイル通過」と表現が一人歩きすることで、緊張感が作り出され、「反撃能力」を含む軍備増強の口実とされることを懸念する。もちろん、高度にかかわらず弾道ミサイルの発射は許されない。
二つ目の問題は、今回の決議では緊密に連携する対象国を「米国、韓国等関係国」と、「等」はつけつつも米韓に限定してしまったことだ。以前の対北朝鮮決議文では「米韓中ロと連携して国連安保理における議論を主導する外交努力を展開すべきである。」(*)「六者会合共同声明の趣旨に反する」(**)など、中ロを含めた連携による外交努力に意欲を示していた。ウクライナ情勢の関連でロシアと連携することが難しい状況にあるにせよ、中国との連携に言及しなくなったことは対北朝鮮外交上の後退である。北朝鮮による挑発行動をきっかけに、日韓米と中ロの対立構造が作られることは,絶対に避けなければならない。
繰り返しになるが、北朝鮮によるミサイル発射は許されない。だからこそ今回の決議に反対はしなかった。しかし、北朝鮮情勢を口実に軍拡を求める動き、国際的な緊張をあおる動きに対しては、注意深く牽制しなければならない。
*「北朝鮮による五度目の核実験に対する抗議決議案」第一九二回国会、決議第一号)
**「北朝鮮によるミサイル発射に抗議する決議案」第一九三回国会、決議第一号)