優生保護法に基づく強制不妊手術(優生手術)を巡る一連の国家賠償請求訴訟に対し、
今年10月25日、仙台高裁にて優生手術が人権侵害であることを認め、国に損害賠償を命じる判決が
言い渡され、全国で原告勝訴判決は高裁・地裁合わせて8件(※1)となった。さらに、これまでの判決の
すべてが、優生保護法の違憲性を明快に指摘した。
1948年に成立した優生保護法に基づき、約2万5000人の障害者が不妊手術を強制され、
被害者の方々は今なお差別を受け、癒えぬ傷に苦しんでいる。
優生保護法は、1996年に改正され、優生条項が削除され母体保護法になったが、
その時点で優生手術に対する謝罪と補償は全く議論されなかった。
その結果、優生条項はなくしても、優生思想は強固にはびこったままで、
法改正から27年が経過した今なお、日本では優生思想と障害者に対する偏見差別はなくなっていない。
やまゆり園の障害者殺傷事件など、優生思想に基づく悲惨な事件はあとを絶たない。
出生前診断が普及し、法律によるのではなく、胎児に障害や先天性の病気があると、
個人の自己決定(選択)で中絶する人が大多数だ。
私たち一人一人が優生思想に直面せざるを得ない、新優生主義の時代に生きている。
だからこそ、優生保護法の犯した罪に向き合い、「不良な子孫」「生まれてくるべきでない命」などない、
どんな命であっても幸せに生まれ育つことができる社会の第一歩として、
政府や国会が優生保護法の違憲性を直ちに認め、すべての被害者の尊厳回復に向け、
謝罪と十分な補償、そして優生思想や障害者差別の根絶に取り組む、といった
優生保護法問題の全面的解決は、被害者や障害者だけでなくすべての人にとって必要なことだ。
優生保護法は議員立法により全会一致でつくられ、国の政策として障害者の人権を侵害し、
社会に優生思想を広めてきたものであり、立法府の責任は極めて重い。
2019年には議員立法で「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に
関する法律(以下、「一時金支給法」)」が成立し、被害回復に向けた一歩を踏み出したが、
一時金支給法が成立してから4年半が経ち、請求期限が残り半年に迫ってきているなか、
一時金の認定人数は1000人強にとどまっており、未だに多くの被害回復がなされていない現状にある。
また、今日まで、優生手術に対する一連の国賠訴訟では、
一時金支給法の320万円を大幅に上回る賠償額が認められ、
また被害者本人だけではなく配偶者の請求を認める判決も出されているところであり、
一時金支給法では被害回復には余りにも不十分と言わざるを得ない。
被害者はすでにご高齢の方が多く、裁判中にも次々と亡くなっている状況であり、
最高裁判決を待つ時間は残されていないにもかかわらず、
政府は自らの責任を認めず上訴をしており、最高裁判決までその解決を引き伸ばそうとしている。
今こそ政府及び国会は、優生保護法問題の全面的解決に向け、
その役割と責任を早急に果たさなければならない。
重度障害をもつ当事者議員3名を擁するれいわ新選組は、
すでに2022年3月23日及び2023年3月27日に出した声明でも求めてきたところであるが、
政府に対し次の行動を再び強く求めるものである。
・内閣総理大臣が速やかに優生保護法問題の被害当事者と面談し、謝罪する場を設けること。
・これまでの原告勝訴判決に対する上訴(※2)を取り下げること。
・早期の司法解決を図るべく、原告団及び弁護団との間で基本合意の締結に向けた
協議を速やかに開始すること。
そして国会においては、8件の原告勝訴の判決の指摘を真摯に受け止め、
優生保護法問題の全面的解決に向けて、法整備に全力で取り組む決意であることを表明する。
最後に、重ねて、呼びかける。
れいわ新選組は、誰もが「生きていて良かった」「生きているだけで価値がある」と
思える社会の実現をめざしている。
能力主義や優生思想を生み出してきた国策に対して、徹底的に抗い、
誰もが生きにくい、地獄のような社会を変えていこう。私たちは、そのために全力を尽くしていく。
2023年11月10日
れいわ新選組
(※1)地裁での3つの判決(2023年1月23日熊本地裁、同年2月24日静岡地裁、同年3月6日仙台地裁(同年10月25日判決の原審))と、高裁での5つの判決(2022年2月22日大阪高裁、同年3月11日東京高裁、2023年3月16日札幌高裁、同年3月23日大阪高裁、同年10月25日仙台高裁)
(※2)2022年2月22日大阪高裁判決、同年3月11日東京高裁判決、2023年3月16日札幌高裁判決、同年3月23日大阪高裁判決、同年10月25日仙台高裁判決、2023年1月23日熊本地裁判決、同年2月24日静岡地裁判決に対する上訴